金融庁の報告により、年金2,000万円問題が勃発したことは記憶に新しいでしょう。
「老後20~30年を生きるためには2,000万円の資金が必要になる」とした報告書で、メディアにも国民にも大きく注目されました。
確定拠出年金について一から知りたい人
「老後貧乏が心配。貯金だけだと不安だし、確定拠出年金も始めてみたい。けど何だか難しいそう・・そもそも資産運用なんてしたことないし、自分で運用なんてできるんだろうか。損したら嫌だな 」
今回はそんな疑問にお答えしつつ、「確定拠出年金」について詳しく説明していきます。
目次
老後資金2,000万円問題について
確かに、60歳の夫婦2人の生活費を仮に25万円とすると、
月の生活費25万円 × 12ヵ月 × 20年間 = 6,000万円
60歳以降の老後20年間を暮らすのに、なんと6,000万円も必要になります。
年金で25万円も賄えない可能性が高いため、月々の赤字が出るというのは何となく分かりますね。
ましてや、少子高齢化が加速する日本で、現行のままの水準で年金を貰えると思っている若者は少ないでしょう。
確定拠出年金制度導入の背景
年金制度や企業の退職金制度の環境が大きく変わってきており、自分で一定の老後資産を形成していく必要性が高まっています。
- 国の税収悪化
- 少子高齢化による年金財源の減少
- 退職金制度(年金・一時金)実施する企業の減少
- 人材派遣や契約社員活用による雇用の流動化・多様化
- フリーランスなど新たな働き方の出現
日本の年金制度
まずは、日本の年金制度について説明します。
日本の年金制度は3つの年金から構成されており、3階建てと呼ばれます。
1階部分 | 国民年金 |
基礎年金:全国民が加入する公的年金制度 |
2階部分 | 厚生年金 | 会社員や公務員の公的年金制度 |
3階部分 | 企業年金 | 会社員の私的年金制度 |
3階部分の「企業年金」は公的年金の上乗せであり、 「厚生年金基金」「確定給付企業年金」「(企業型)確定拠出年金」の3つに分類されます。
確定拠出年金とは?
確定拠出年金は企業や加入者が毎月一定の掛金を拠出して、自分で商品を選択して運用をします。
確定拠出年金はDC(=Defined Contribution Pension Plan)と訳されます。
確定拠出年金には企業型(企業型DC)と個人型(個人型DC)があります。
個人型DCは「iDeco(イデコ)」と呼ばれており、皆さんも耳にしたことはあるかと思います。
企業型DC(マッチング拠出)の制度
企業型DCは所属する企業が従業員のために掛金を拠出します。
また、事業主掛金に加えて、加入者(従業員)も企業型DCに掛金を上乗せ拠出することができます。これを「マッチング拠出」と言います。
なお、お勤めの企業に企業年金が無い場合の拠出限度額は、月額最大55,000円(年額660,000円)です。
「企業型DC」の詳しい内容については、下記の記事をご参照ください。

個人型DC(iDeco)の制度
企業型DCが会社の退職金制度の枠内であるのに対し、個人型DC(iDeco)は個人が自分の意志で掛金を拠出します。
個人型DC(iDeco)は、職業によって月額掛金の上限額が異なり、自営業者(第1号被保険者)は最大月額68,000円まで拠出ができます。
「個人型DC」の詳しい内容については、下記の記事をご参照ください。

確定拠出年金の節税メリット
確定拠出年金には以下の3つの節税効果があります。
・加入者掛金は全額所得控除となり所得税と住民税が軽減される
・配当金・利息・売却益などの運用益は全額非課税となる
・公的年金控除、退職所得控除の各種控除が適用される
節税効果については、次の記事で詳しく解説をしております。

確定拠出年金の運用
確定拠出年金では自分で金融商品を選び、運用をします。
運用商品の中には、「元本確保型」や「元本変動型」と言われる商品が用意されています。
それぞれの商品やリスクは以下です。
種類 | 商品 | メリット・デメリット |
元本確保型 | 定期預金・保険 | ・積み立てたお金が減ることはない ・資産を大きく増やせない |
元本変動型 | 投資信託 | ・時間を味方につけ、資産を増やせる ・運用によっては損をすることも |
ご自身のリスク許容度に応じて、商品を選択しましょう。
確定拠出年金の受取方法
確定拠出年金の受け取り方法は以下の3種類です。
原則60歳になったら老齢給付金の請求ができます。
・老齢給付金:年金、一時金(併用可)
・障害給付金:年金、一時金(併用可)
・死亡一時金:一時金のみ
老齢給付金を「年金」で受け取る場合
老齢年金として受け取る場合は、公的年金などと同じように「雑所得」とみなされるため、所得税が課税されてしまいます。
しかし、「公的年金控除(国税庁HP参照)」の対象となるため、一定額は所得控除が受けられます。
老齢給付金を「一時金」で受け取る場合
一時金として受け取る場合は「退職所得控除」の対象になります。
勤続年数 | 退職所得控除額 |
20年以下 | 40万円 × 勤続年数 ※80万円に満たない場合には、80万円 |
20年超え | 800万円 + 70万円 × (勤続年数 – 20年) |
15年勤務した場合と、25年勤務した場合の「退職所得控除額」を計算してみます。
勤続年数 | 退職所得控除額 |
15年 | 40万円×15年=600万円 |
25年 | 800万円+70万円×(25年-5年)=1,150万円 |
上記の通り、長く勤務すればより多くの「退職所得控除」が得られます。
そして、「退職所得」の金額は以下のように計算します。
(収入金額 - 退職所得控除額) × 1 / 2 = 退職所得の金額
今の内容を踏まえて、仮に25年間勤務して、収入金額(退職金+老齢給付一時金)が2,000万円となった場合の退職所得を計算しますぞ!
(収入金額2,000万円-退職所得控除額1,150万円) × 1 / 2 = 退職所得425万円
そして、この退職所得425万円に対して、所得税や住民税が課せられます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
60歳まで引き出すことができないという流動性の低さを考慮しても、税制上のメリットは非常に大きいものと考えます。
老後の資産形成の方法の一つとして、検討してみてはどうでしょうか。