決算書について詳しく知りたい人
「これから株の投資をしていきたい。企業分析が大事と聞くけど・・決算書なんて読んだことないし。難しそう。用語の定義も知らない。」
今回はズバリ、初心者向けに決算書の見方・読み方を解説します。
要点さえ分かれば、初心者でもすぐに決算書を読めるようになります。
それでは解説していきます。
①:決算書の仕組み
まずは決算書の仕組みから解説。
決算書は会社の1年間の成績表
決算書は正式には「財務諸表」と呼び、会社の期首~期末までの期間でどれだけの成果を上げたのかを表す「成績表としての役割」があります。
一般的には4/1~3/31の1年間を区切りとする企業が多いですが、9/1始まりなど企業によって様々です。
また決算書は、会社が好調か不調かを表す「健康診断書の役割」もあります。
②:決算書の見方・読み方
決算書は、財務三表と呼ばれる以下の3つで構成されており、この三表の読み方を知ることで企業の状態がより具体的に分かるようになります。
①損益計算書(P/L)
②貸借対照表(B/S)
③キャッシュ・フロー計算書(C/S)
損益計算書(Profit and Loss Statement)
損益計算書に、「売り上げ-費用=利益」が書かれています。
損益計算書を読むことで、会社の1年間の儲けが分かります。
貸借対照表(Balance Sheet)
貸借対照表には、「資産の部」「負債の部」「純資産の部」の3つの項目が書かれています。
貸借対照表を読むことで会社の財政状況が分かります。
キャッシュ・フロー計算書(Cash Flow Statement)
キャッシュ・フロー計算書は、会社の血液たる「現金の流れ」が書かれています。
損益計算書の売上や利益は、必ずしも「実際の現金の動き」を表しているものはありません。
なぜなら、損益計算書では売掛金など数ヵ月後にようやくお金をもらえる項目も「売上〇〇円」と記載されてしまうからです。
そのため、キャッシュ・フロー計算書を作って、実際の現金の流れを分かりやすくする必要があるのです。
③:損益計算書
損益計算書には大きく分けると5つの項目に分けられ、項目と加減しながら上から下へとみていくものです。
①売上総利益
②営業利益
③経常利益
④税引前当期純利益
⑤当期純利益
一つずつ解説をしていきます。
売上総利益(売上高-売上原価)
売上総利益は、商品を売って得た利益である「売上高」から売るために掛かった費用である「売上原価」を引いた数字です。
売上総利益の割合が大きければ、商品力(お金を稼ぐ力)が高いということになります。
売上総利益はいわゆる「粗利」です。
営業利益(売上総利益-販売費及び一般管理費)
上記の売上総利益から「販売管理費」や「一般管理費」(略して販管費)を引いたものが、営業利益です。
商品を売るためには、PRや販促活動などをしなければなりませんので、それらに掛かる費用が「販管費」となります。
<主な販管費>
・広告宣伝費
・研究開発費
・減価償却費(設備を経費計上)
・賃借料(土地や建物の賃料)
・人件費(給料・賞与)
・通信費(通信費・切手・FAX)
・消耗品費(コピー用紙・事務用品)
営業利益は、事業に必要な費用を差し引いたものであり、その会社の事業でどれくらい稼ぐことができるかと表します。
売上が大きくても、販管費が多くを占めていれば最終的な利益は少ないですからね。
経常利益(営業利益+営業外収益-営業外費用)
上記の営業利益から「営業外収益」や「営業外費用」を足し引きしたものが経常利益です。
銀行預金から得られる利息や、株式の配当金、もしくは銀行からの借入金に対して支払う利息などを足し引きします。
事業の儲けだけではなく、会社の財務活動に関する収益や費用が計上されます。
<主な営業外収益>
・受取配当金(株の配当金)
・受取利息(銀行の預金)
・為替差益
・雑収入
<主な営業外費用>
・支払利息(銀行の借入金)
・為替差損
・雑損失
経常利益は「ケイツネ」とも呼ばれますな!
税引前当期純利益(経常利益+特別利益-特別損失)
上記の経常利益から「特別利益」や「特別損失」を足し引きしたものが税引前当期純利益です。
税引前当期純利益は、何か特別な事情や一時的な要因で生じた収益や費用を加味します。
<主な特別利益>
・投資有価証券売却益
・固定資産売却益
<主な特別損失>
・投資有価証券売却損
・固定資産売却損
・災害損失(火災、地震、台風など)
・損害賠償損失
ここまでくれば、次の項目で税金を差し引いて完了です。
当期純利益(税引前当期純利益-法人税・住民税)
上記の税引前当期純利益から「法人税」や「住民税」を足し引きしたものが当期純利益です。
この当期純利益が、1年間で会社が稼いだ最終的な利益となります。
我々株式投資家にとって大事な配当金もこの当期純利益から配分されますので、非常に重要な数値となります。
当期純利益に対する配当金の割合を「配当性向」と言い、企業がどれだけ株主を重視しているかの指標となります。
④:貸借対照表
貸借対照表は会社の財政状況を表し、左側に「資産の部」が記載され、右側に「負債の部」「純資産の部」が記載されます。
資産の部 (会社の財産) |
負債の部 (返済義務のあるお金) |
純資産の部 (返済義務のないお金) |
貸借対照表の左側と右側の合計額は必ず一致します!
それでは、この3つを順番に解説していきます。
資産の部
左側ブロックの資産の部は、1年以内に現金化できる「流動資産」と、1年以内には現金化できない「固定資産」に分けられます。
<主な流動資産>
・当座資産(現金化しやすい資産)
→現金、預金、売掛金、受取手形
・棚卸資産(いわゆる在庫)
→商品、製品、半製品、材料
<主な固定資産>
・有形固定資産
→土地、建物、機械、設備什器
・無形固定資産
→借地権、特許権、営業権
・投資その他資産
→長期保有する債権、投資有価証券
資産の部をみれば、その企業がどんな体つきなのかが分かりますね。
負債の部
右側ブロックの上側の負債の部は、1年以内に返済をしなければならない債務である「流動負債」と1年を超えて返済が可能な債務である「固定負債」に分けられます。
<主な流動負債>
・仕入債務
→買掛金、支払手形
・短期借入金
→支払い期限が1年以内の借金
<主な固定負債>
・社債(会社が発行する債券)
→償還日に元本の返済義務がある
・長期借入金
→支払い期限が1年以上の借金
・引当金(将来の出費の準備)
→退職給付引当金
純資産の部
右側ブロックの下側の純資産の部は、会社の稼いだお金(利益)や株主などの出資者から集めたお金で構成され、「株主資本」「評価・換算差額等」「新株予約権」に分けられます。
<主な株主資本>
・資本金
→株主の出資金のうち資本金に組み込んだ資金
・資本剰余金
→株主の出資金のうち資本金に組み込まなかった資金
・利益剰余金
→会社が得た利益のうち内部留保したお金
<評価・換算差額等>
・会社が保有する有価証券の時価との差額を表すもの
<新株予約権>
・株式の交付を受ける権利
・従業員のストックオプション
⑤:キャッシュ・フロー計算書
帳簿上(損益計算書上)は売上や利益がたくさんあっても、ほとんどが売掛金によるもので、数ヵ月後にならないと実際に現金が入ってきません。
手元に現金がなければ資金不足となり、倒産の危険性も出てきてしまいます。
キャッシュ・フロー計算書は、そんな損益計算書では分からない「会社の現金の出入り」を表します。
会社経営はキャッシュ・フローが命ですね。
キャッシュ・フロー計算書では、資金の流れを次の3つで表します。
①営業キャッシュ・フロー
②投資キャッシュ・フロー
③財務キャッシュ・フロー
上記3つをそれぞれ解説していきます。
営業キャッシュ・フロー
営業キャッシュ・フローは、事業でどれだけ現金を稼げたかを表しています。
損益計算書で出てきた「税引前当期純利益」に相当する「税金等調整前当期純利益」の数字が営業キャッシュ・フローの一番初めの数字になり、そこから各種の増減を計算していきます。
営業キャッシュ・フローがプラスであれば、事業で現金を得られている状態であり、マイナスであれば、現金が流出している状態となります。
そのため、この部分の数値は基本的にはプラスにしなければなりません。
営業キャッシュ・フロー(例) | |
税金等調整前当期純利益 | 30,000 |
減価償却費 | 20,000 |
売上債権の増減額 | 20,000 |
棚卸資産の増減額 | -10,000 |
仕入債務の増減額 | -10,000 |
営業キャッシュ・フロー | 50,000 |
営業キャッシュ・フローがプラスであれば、事業で稼げていると言えます。
投資キャッシュ・フロー
投資キャッシュ・フローは、将来に向けてどの程度投資ができているかを表しています。
成長している企業であれば、積極的に投資を行っているため、投資キャッシュ・フローはマイナスになることもあります。
株価に関して言えば、将来に向けてお金を使うことは良いことと評価されるため、投資キャッシュ・フローはむしろマイナスが好ましいとされています。
投資キャッシュ・フロー(例) | |
有形固定資産の取得 | -20,000 |
有形固定資産の売却 | 10,000 |
投資有価証券の取得 | -50,000 |
投資有価証券の売却 | 10,000 |
投資キャッシュ・フロー | -50,000 |
投資キャッシュ・フローがマイナスであれば、積極的に将来に投資していると言えます。
むしろプラスだと、何か現金が必要な特別な事情があるのでは?と捉えられてしまいます。
財務キャッシュ・フロー
財務キャッシュ・フローは、会社が借りたお金と返したお金の流れを表しています。
銀行からお金を借りたり、社債を発行して現金を得た場合はプラスになります。
逆に、銀行にお金を返したり、社債を償還した場合はマイナスとなります。
財務キャッシュ・フロー(例) | |
長期借入による収入 | 30,000 |
社債の償還による支出 | -20,000 |
株式の発行による収入 | 30,000 |
配当金の支払い | -20,000 |
財務キャッシュ・フロー | 20,000 |
フリーキャッシュ・フロー
キャッシュ・フロー計算書の中でも重要な考え方がフリーキャッシュ・フローです。
文字通り、企業が自由(フリー)に使えるお金を表しています。
フリーキャッシュ・フローは以下の計算式で表されます。
フリーCF=営業CF+投資CF
仮に、営業CFが+100、投資CFが△30の場合、
フリーCF = 100 + △30 = 70 となります。
フリー・キャッシュフローが潤沢な企業は、借入金の返済、株主への配当、事業拡大の投資などが可能になるため、フリーキャッシュ・フローが多い会社は経営状況が良好と判断されます。
単年度のフリーキャッシュ・フローだけを見ると積極的に投資をした年はマイナスになってしまうため、複数年のフリーキャッシュ・フローを見ることが大切です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
決算書(財務諸表)について一通りの内容と読み方がご理解いただけたかと思います。
「損益計算書」「貸借対照表」「キャッシュ・フロー計算書」はそれぞれ単体で見るのではなく、三表をつなげて読むことで、よりその企業の状態がイメージできるようになります。
決算書から、その企業の隠れた状態やストーリーを読み解き、投資に活かしていきましょう。
皆様のご参考になれば幸いです。